具体について

戦後日本の前衛美術運動の中でも、現在世界的に最も高く評価されているのが、

「具体美術協会(GUTAI)」です。

「具体美術協会(GUTAI)」の名称は

「我々の精神が自由であるという証を具体的に提示したい」という想いの表れでした。

GUTAI」は、吉原治良(1905-72)をリーダーとして兵庫県芦屋市に1954年に発足し、

継続的に活動をしましたが、72年の吉原の急死とともに、18年間の活動に終止符が打たれ、「GUTAI」は解散しました。

 吉原の元に集まった阪神間の若者達は、「絶対に人の真似をするな」、

「これまでになかったものを作れ」という吉原の教えを実践して、

アクション・ペインティングやパフォーマンスを芸術として表現しました。

GUTAI」の若いメンバーたちは、半裸になって泥と格闘し足で絵を描いたり、

紙破りのパフォーマンスをしたり、また大砲を使って絵を一瞬に描いたり、

絵の具を瓶に詰め投げつけて作品として表現したり、

電気服を着用し舞台に立つパフォーマンスなど、

それまでにない奇想天外な方法でアートの実験を繰り返ししていきました。

世界的にも極めて独自性の高い表現は、作品の完成度というような出来上がった結果ではなく「行為の集積」であるという新しい価値観が生まれました。

グループ結成翌年1955年から、機関誌「GUTAI」を継続的に発行しました。
芦屋市松浜公園にて、1955年に「真夏にいどむモダンアート野外実験展」

また1956年には同じく松浜公園にて、「野外具体美術展」を開催し、

1957年には大阪と東京で「舞台を使用する具体美術」を企画するなど

盛んな活動が続けられました。
1962
年には、大阪中之島に吉原治良所蔵の古い土蔵を改装した

「グタイピナコテカ」※1が開設されました。

そこを「GUTAI」の活動の拠点として、

メンバーの個展を矢継ぎ早に開催してくようになりました。

そして、「GUTAI」はフランスの美術評論家ミッシェル・タピエが1957年に来日し、

提唱していたアンフォルメル絵画理論に組み込まれることで

海外において評価されるようになり、

世界的に認識されることになりました。更に近年、欧米で「GUTAI」の再評価が高まり、

2013年ニューヨークのグッゲンハイム美術館の「GUTAI : 素晴らしい遊び場」展では、

25万人の観客動員数があり同美術館でも記録的な数字となり、

ますます海外からの注目を浴びています。

※1  現在の三井ガーデンホテル大阪プレミアがある場所に活動拠点として存在した